日本語を教えることは、学習者との共同作業です。学習者が日本語を学ぶ目的やゴールがある場合、学習者がもっとやる気になれるように評価をすることが重要であると考えています。
未知の語学を学ぶことは、楽しい一面もありますが、苦労もあります。いろいろな理由で日本語を学ぶことを選んでくれた学習者に感謝をしつつ、一緒に成長していきましょう。
この記事では、「学習を評価する」とはどういうことか? 評価する目的や評価の方法にはどんな方法があるかなど、基本的なことについて書きたいと思います。
日本語の学習を評価するとは
「学習を評価する」とは、日本語学習の成果や学習者の成長を何らかの「ものさし」で測ることです。
学習者は、この「ものさし」で自分の成長を知り、自信をつけることができます。
日本語の学習を評価する「ものさし」について
レッスンの目的によって、重点を置くことは、さまざまです。
大切なことは「教えたことを測る」ということです。評価のための方法である「テスト」は、評価方法の1つにすぎません。
学習者の観察や学習者との面接でも、評価はできます。作文や提出物なども評価をするための重要な材料です。
ひとつの評価方法である「テスト」は、同じ条件のもとで、同じものさしを使って測るので、客観性、公平性が高いと考えられます。
評価はだれのためのもの?
評価はだれのためのものでしょうか?
1、教師が学習者を評価するもの
2、教師が指導の成果を測るもの
3、学習者自身が学習成果を評価するもの
評価の対象になるものは、言語知識、実際の言語運用、異文化理解能力まで、さまざまな側面があり、評価の方法もいろいろあります。
日本語能力試験(JLPT)について
日本語能力試験(JLPT)は、世界中で多くの学習者が受ける日本語の試験です。
試験は難易度によってN1~N5までの5段階に分かれています。N1が最も難しく、N5が最も易しいレベルです。
47都道府県、85の国・地域、249都市で受験ができます。(2018年実績)
日本語を母語としない人の日本語能力を測定する試験として、1984年に開始されました。受験者数は全世界で61万人(2011年)です。
日本語能力試験のメリット
外国人が日本語能力試験を受けるメリットを紹介します。詳細はこちらをご覧ください。
出入国管理上の優遇措置が与えられる
日本語能力試験の合格者には、それぞれポイントがつきます。N1は15ポイント、N2は10ポイントがつき、ポイント合計が70点以上の場合に出入国管理上の優遇措置が与えられます。
日本の国家試験を受けられる
医師、看護師、薬剤師、保健師、助産師、獣医師、歯科衛生士などの日本の国家試験を受験するには、日本語能力試験の認定が必要です。
中学校卒業程度認定試験で一部の試験科目の免除が受けられる
外国籍の方が中学校卒業程度認定試験を受験する場合、日本語能力試験N1またはN2を取得していれば国語の試験が免除されます。
看護師・介護福祉士の候補者選定の条件である
EPA(経済連携協定)に基づき、日本での看護師・介護福祉士の候補者選定の条件の一つとなっています。インドネシアとフィリピンはN5レベル、ベトナムはN3レベル以上の認定が必要と定められています。
日本語能力試験の特徴
日本語能力試験JLPTは、文字・語彙・文法の言語知識だけでなく、聴解試験がありコミュニケーション能力も測ります。解答はマークシートの記入のみです。
面接や作文など、実際に話したり書いたりする項目はないため、試験結果による日本語レベルはあくまで目安と考えたほうがよいでしょう。
JFロールプレイテストについて
次に「JFロールプレイテスト(JF日本語教育スタンダード準拠ロールプレイテスト)」を紹介します。
このテストは、口頭での課題遂行能力を測るためのテストです。教育現場の教師ができるだけ簡単に実施できるよう開発されました。
JF日本語教育スタンダード(JFスタンダード)はコースデザイン、授業設計、評価を考えるための枠組みです。
課題遂行能力(言語を使って課題を達成する能力)と、異文化理解能力(お互いの文化を理解し尊重する能力)を育成する実践をサポートし、日本語を通じた相互理解を目指します。
出典:独立行政法人国際交流基金 日本語国際センター「JF日本語教育教育スタンダード
JFスタンダードでは、「日本語を使って何ができるか」という課題遂行能力をレベルの指標にしています!
JFロールプレイテストのメリット
JFスタンダードは、CEFRの考え方にもとづいて開発されました。
JFスタンダードを基準としたテストを評価に利用すると以下のメリットがあります。
1、国や機関が違う教師同士でも、同じ基準で話し合いや情報交換ができる。
2、学習者の日本語力を、他の言語との共通基準にもとづいて説明できる。
JFロールプレイテストの特徴
会話力は、日本語能力試験のレベルより劣る場合が多いです。
そのため、学習者の会話力は、JLPTのレベルとは別に把握しておくとよいでしょう。
公式のテストではありませんが、講師が判断できるものでおすすめなものは、「JFロールプレイテスト」です。
JFロールプレイテストの主な特徴は、次の通りです。
・教育現場の教師ができるだけ簡単に実施できる。
・ロールプレイを通して「口頭でのやりとり」能力を測ることができる。
・短時間(約15分)で実施できる。
テストやり方のマニュアルはこちらからどうぞ!
まとめ
日本語の学習の評価は、学習者が自信をつけたり、日本語への興味が広がるようなものであってほしいと思います。
日本語の試験と言えば、日本語能力試験(JLPT)が有名です。合格すると様々なメリットがありますが、マークシートの試験ですので、あくまでもレベルは目安となります。
一方、JFスタンダードのロールプレイテストは、口頭でのテストです。
教育現場の教師が、学習者のレベルをJFSに基づいて、大まかに把握する際に利用できるものとして開発されました。
評価は、できないことを学習者に指摘をするためのものでなく、「Can-do」に基づいて、こんなことができるようになったと評価をすることによって学習意欲を引き出すような講師でありたいと考えます。
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